私が読みたくて読みたくて図書館で予約してから1年待った本を紹介します。
おすすめポイント
最初は塙さんが書かれたのかと思っていましたが、聞き手と表紙に書かれており、テーマに対して塙さんが回答するインタビュー形式で展開。
塙さんの視点で語られていることと、塙さんのとぼけたような口調も読者に思い浮かべさせる効果もあってとても読みやすくなっています。
M-1の細かい考察やお笑い芸人に対する評価が秀逸
M-1論
まずはなんといっても塙さんのお笑いに対する考察の鋭さが光ります。
そのためM-1ファン、お笑いファンも楽しめる一冊になっています。
塙さんの雰囲気というとネタの影響もあってか、少しとぼけたような雰囲気をお持ちです。
しかしこの本でM-1やお笑いのことを語る著者は、とても細かくM-1やお笑いを研究していることがわかります。
しかも良い意味で研究していることを感じさせない雰囲気があります。
この本のサブタイトル「関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」は、お笑いが好きな人なら、誰しも一度は感じたことがあるでしょう。
M-1で勝つというのは「ネタがいい」とか「キャラが立ってる」とは別の要素があることを塙さんは1冊を通じて語っています。
M-1のネタ時間は4分間。
とにかくつかみが早いことが大事。
さらにずっと右肩上がりで、後半大爆発が必要とも言われています。
塙さんが見るお笑い芸人たち
また塙さんはこの本で20組以上のお笑い芸人について語っています。
それは愛情あってのことだというのが読み手に伝わります。
そもそも相手を認めていなかったら他人の弱点なんて語れないですから。
2018年のスーパーマラドーナ(以下スーマラ)について
M-1に思い入れが強いぶん、M-1の流儀に従って新ネタで挑んだんでしょうね。ネタ選びを失敗したなと思いつつ、その心意気には胸を打たれました。
「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」より引用
と語っています。
ナイツ自身、ストイックに新ネタをM-1にかけた年(2010年)がありました。
あまりウケなかったと自身では言うものの「M-1で時事ネタをやるという夢はかないました」と語っている通り、新しいことをやり通した部分については満足しています。
そのことがあったから、スーマラの2018年のネタについても胸を打たれたと表現されたんだと思いました。
お笑いが好きだからこそ研究するし、M-1が好きだからこそ研究する。
私もお笑いもM-1も好きですが、なぜそのコンビがウケなかったか、勝てなかったのか、何が足りないかまではわかりません。
ただ面白いものが見たい。
見ている人はそんなもんだと思います。
でもお笑いで生きていく人は知らずにはいられないし、考えずにはいられない。
その姿勢を塙さんの考察から感じました。
スポーツ好きでリスペクトを感じられるからスポーツ好きも楽しめる
塙さんといえば、某番組で有名になりましたがお世辞にも運動神経が良いとはいえません。
それなのに、スポーツが大好きで、「球辞苑」や「プロ野球そこそこ昔話」などのMCでも幅広い知識を披露してくださいます。
選手をリスペクトしているのがとても伝わるので、スポーツ好きからも見ていて気持ちがいいのです。
メジャーリーガーのダルビッシュ有選手が変化球を試す際、「いきなり実践で投げ、それが一番いい『練習』になる」と語っていることを例にとり
それを聞いたとき、漫才と似ているなと思いました。
バッターがいないところで投げる練習が無意味なように、漫才もお客さんがいないところでやっても得られるものはほとんどありません。
「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」より引用
と言っています。
あえて、ダルビッシュ選手が言っていることを例にとることで私たちによりわかりやすく説明されていることが伝わるのです。
M-1をトラウマに思う塙さんの心情の変化が読む人全ての心を打つ
塙さんは「ナイツはM-1でウケなかった」「トラウマになっている」と言っています。
結果的にナイツはM-1チャンピオンになることなく出場資格を失いました。
しかし、その後塙さんはM-1で審査員になりました。
「あれ?ナイツってM-1優勝した?」と思ったことを覚えています。
そのような感想を視聴者が感じること、塙さんは百も承知だったのです。
しかし、塙さんは自分が呼ばれた理由も理解していました。
チャンピオンになれなくても、
ウケないコンビのことも、
緊張で力を出し切れないコンビのことも、
本来の実力が出し切れないコンビのことも、
彼らの気持ちがわかるから。
塙さん審査員として出たM-1ではウケてます。
M-1と友達になれた気がすると言っている塙さんに拍手を送りたいです。
おまけのようなまとめ
この本は2018年の霜降り明星が優勝した後に書かれた本です。
そのため、その後優勝するミルクボーイのことは文中には一切書かれていません。
塙さんはミルクボーイに霜降り明星に感じたような「強さ」は感じたのか聞いてみたいです。
そして、この本ではまだ優勝する前に決勝進出で敗退していた頃のマヂカルラブリーのことにも触れています。
当時私がもやっとしていた違和感はこれだったのか、と塙さんはちゃんと言葉にしてくださっています。
このときと今とを比較する意味でもお笑い好きの方は一読の価値があると思います。
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